SURF trial 概要
 肝細胞癌の治療法選択についての確固としたエビデンスは皆無であり、各施設・各診療科により様々な選択がなされているのが現状である。
 初発肝細胞癌に対する初回治療の選択の根拠となるエビデンスを確立することを目的とし、現在最も有力な治療法である肝切除とラジオ波焼灼法(RFA)の有効性を、肝機能良好(Child-Pugh score7点以下)かつ3cm以下、3個以下の腫瘍条件を満たす初発症例を対象とした無作為化比較試験にて比較検討する。
対象について

選択基準

登録日の年齢が20歳以上,80歳未満の患者
肝機能がChild-Pugh score 7点以下に分類される患者
腹部ダイナミックCTにて,早期相で高吸収域,後期相で低吸収域に描出される典型的な肝細胞癌の造影所見を示し,かつ最大径3cm以内,3個以内と診断された患者
画像上明らかな肝外病変や脈管侵襲(門脈・胆管・静脈の腫瘍栓)を伴わない患者
当該施設の内科および外科の両科の担当医師が,肝切除およびRFAによって治癒的に治療が可能と判断した患者<
肝細胞癌に対して局所的または全身的化学療法,放射線治療などの前治療を受けていない患者
全身状態(ECOG performance status)が0〜2である患者
以下に示す主要臓器(骨髄,肝,腎)機能が十分保持されている患者
 白血球数
 血小板数
 ヘモグロビン
 血清総ビリルビン値
 プロトロンビン時間(活性値)
 血清クレアチニン値
 BUN
:2,000 /mm3以上,かつ10,000 /mm3以下
:50,000 /mm3以上
:8.0 g/dL以上
:2.0 mg/dL以下
:50%以上
:1.5 mg/dL以下
:35 mg/dL以下

除外基準

活動性の重複癌(同時性重複癌)または無病期間が5年以内の異時性重複癌を有する患者(ただし,局所治療により治癒と判断されるcarcinoma insitu(上皮内)または粘膜内癌相当の病変は活動性の重複癌に含めない)
登録前6ヶ月以内に心筋梗塞または不安定狭心症と診断された患者
間質性肺炎,肺線維症,試験治療の実施が困難と判断される肺気腫のいずれかを合併する患者
ヨードアレルギーまたは腎機能低下(血清クレアチニン1.5mg/dL以上)のため,造影CTを施行できない患者
精神病または精神症状を合併し,本臨床試験の実施が困難と判断される患者
妊娠中または妊娠の可能性のある患者
方法について
 参加施設の外来に紹介された患者は血液検査・造影CTを受け、適格条件に合致すると判断された症例に対し試験の説明が行なわれる。このうち文書による同意を得られた症例を対象に無作為に2群(手術群、RFA群)に割付け、割付に従った初回治療を同施設(または診療グループ)でそれぞれ施行する。
 治療後は同一の方法(採血、造影CT)にて最低5年間経過観察を行う。目標症例数は片群300例、計600例とし、試験開始より3年間を登録期間とする。